2020年03月10日

四 周辺国の情勢?

四 周辺国の情勢?

翌日、翔吉たち四人は出島の商館長(カピタン)をたずねた。

「かどわかされた子供たちをなんとか救い出したいのですが、唐人や西班牙(スペイン)人がからんでいます。そこで、日本周辺の海外の状況についてお教え願いたく、おたずねいたしました」

鎖国している日本に比べ、貿易立国である阿蘭陀(オランダ)は情報収集に熱心である。

ヘンドリックは医官ヨハネスを同席させたうえで、国際情勢を話し始めた。
まず、日本で暗躍している唐人組織についてである。

「お話の『百連壇(びゃくれんだん)』と言う名に似た『白蓮(びゃくれん)教』という宗教結社が唐に存在します。
白蓮教は、浄土教の宗教結社・白蓮宗を起源としています。そのなかの、金のためには犯罪に手をそめることもいとわない百人の連(やから)が、明朝と清朝の政権交代の戦いのドサクサにまぎれて、本土から台湾に渡ったということです。
百連壇は、その白蓮教からはぐれた犯罪者集団と見て間違いないでしょう」

次に、阿蘭陀(オランダ)と西班牙(スペイン)の状況説明に移った。

「阿蘭陀と西班牙は、ほぼ同時期に台湾の一部を占拠しました。
西班牙は、隆盛をきわめていましたが、阿蘭陀の圧迫により台湾を追い出されました。西班牙はその恨みを忘れておらず、阿蘭陀に対して報復を考えていることは明らかです。

今西班牙は、亜米利加(アメリカ)大陸の植民地経営に主力をそそいでいますが、人手の確保に苦労しています。そこで、他国ではクルクルパーと言われている現国王が、国家公認の海賊たちを使って人手を集めています。

西班牙は伝統ある立派な国家ですが、今の王に統治されている国民は可愛そうであると言えます。指導する者が過ちをおかすと…」

翔吉は、顔を赤らめて俯いてしまった…。

最後に、翔吉はおおかた承知している台湾事情に話はおよんだ。
「唐では、一六四四年に明朝がほろび清朝が成立しました。
明朝が敗れたあとも明朝の遺臣・鄭成功(ていせいこう)が、台湾を対清朝への戦いの拠点にしましたが、翌年、鄭成功が病死すると台湾は清朝のものとなりました。

しかし、清朝は積極的な台湾経営は行っていません。
そのため、鄭氏一族の残党や、清本国に住みづらくなった唐人犯罪祖域、外国人海賊などが清朝の目をかすめて台湾各地にいすわっているとのことです」

竜平が五島でしらべた結果を話すと、

「多分その男たちの話はそのままに受けとって間違いないでしょう。最悪の場合、かどわかされた子供たちは墨西哥(メキシコ)まで売られていくおそれがあります。
長期の航海にそなえた準備に二、三ヶ月くらいはかかるはずですが…」
と、話をしめくくった。

翔吉たちは、墨西哥の遠さを教えられると愕然となった。そして、
(なんとしても手が届く台湾で子供たちを奪い返さねば!)
と、決心するのであった。

そのとき、ヨハネスがたずねた。

「皆さんがこのあと台湾へ行かれるのでしたら、私も同行させて頂きたいのです。
お話からすると、私の兄、フレデリックも基隆(キールン)の地下牢にとらわれている可能性があります。兄の消息をしらべたいのです」

「むしろこちらからお願いしたいほどです。ただ、ヨハネスさんが出島を出るときに、超常現象にお付き合い頂かねばなりませんが…」

「ヨハネス、君の兄上は阿蘭陀国民である。無事に連れ戻すよう命令する。西班牙人どもが良からぬことをたくらんでいるのであれば撃破せよ!」
と、ヘンドリックは激励した。

翔吉たちは思うのだった…(これが国として普通だよな)。

翔吉は、調べの結果を鳩に託して江戸に知らせた。文の最後には、
(台湾へ出発する。連絡網を設営するために太助を派遣して欲しい)
と、書き加えていた。

そして、翔吉は行者の無形飛翔の術で出島に向かい、ヨハネスをたずねた。「ヨハネスさん、こちらは私どもを助けてくれている千歳にもなる偉あい行者様です。行者様の驚くべき術でこの出島から連れ出してもらうことにしました」
とヨハネスに告げて、先に出島をあとにした。

指揮所.png


(千歳?なんとかの術?東洋の人はまったく冗長(オーバー)なんだから)
とヨハネスは半ばあきれながら聞きながした。
が、違った…。

翔吉たちが待つ唐人屋敷奥の中庭に、二人の人影が像をむすび始めた。
ヨハネスは白目をむいて泡を吹いていたが、目を覚ますと手桶に水を運ぶよう願った。何度も手をあらう潔癖症の阿蘭陀人を、竜平は同情のまなざしで見まもるのだった…。

江戸、長崎、琉球本島、西表(いりおもて)島、淡水(タンスイ)、そして基隆(キールン)に設営する拠点を直線で結ぶと、五八〇里(約二三〇〇キロメートル)におよぶ経路となる。
皆を乗せた唐船『鶴港(かくこう)』が、白い航跡を長くのばして長崎をあとにした。

四月一日のことであった…
続く
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posted by ぷんぷん at 12:02| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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