2020年04月21日

第六章 牙島(がとう)攻略

第六章 牙島(がとう)攻略




『小さな角』のつぶやき…

理不尽を正すために、難儀な闘いに敢然と挑んでいく頼もしい者ども…、美しいっ!

国を超えた仲間が手伝ってくれるとは…、りふじん堂の、日ごろの誠意を尽くした付きあいが実ったんだな!
目先のことしか考えない、風見鶏のどっかの政治家や役人に、皆の爪の垢でも煎じて大杯でお代わりさせたいほどだ!

それにしても、りふじん堂もその同志も、友情や人情がヨーわかっとる!、ヨー頑張るもんだ。

美しいっ!



一 多国籍軍結成!

江戸から『大和ラクラク便』に乗った者たちが次つぎに長崎に到着した。
五月十七日の早朝のことである。

長崎に到着した宗兵衛は、さっそく長崎奉行に面会を申し出た。

「江戸日本橋の薬膳料理屋で支配人を務めまする、宗兵衛と申します。南町奉行能勢頼相様からの、『出島の商館長殿と談合して、江戸の人々のためになる西洋薬餌を仕込んでまいれ』とのご下命でまかりこしました。
正式の沙汰だと何かと堅苦しくなるゆえ、町奉行の私命による民間人がよかろうとのご配慮で、私がまかり越しましてございます。
お奉行様のご協力にはご老中から、なにぶんの良き沙汰が下されるとのこともあわせてお伝えするように、と言付(ことづ)かっております」

「好きに談合を進めよ、出島警護の者には話を通しておく」
実入りが期待できることを聞いた長崎奉行は、太っ腹の返答を返した。

同日、椅子背負子(大和ラクラク便)にふんぞり返って、皆は順次長崎入りした。(たまったもんじゃない、お京様は別として…)

皆を運び終わったあとも、準備した道具や物資などを、江戸からせっせと運ぶのだった。さらにお京の、

「休んでんじゃないよエンノ字、大砲も運ぶんだよ!」

行者は屈折した随喜の涙を流しながら、さらに阿蘭陀船の大砲と弾薬を唐船『鶴港』に運んだ。
……ぶっ倒れた。

出航前の最後の談合を始めた。善八を除くりふじん堂、長崎唐人衆の長老と翔吉の片腕の竜平、出島の医官ヨハネスらである。

行者は横でのびていた…。

談合を終えると、皆で丸山の料亭に向かった。
ここにおいて行者はむっくりと覚醒して、皆と料亭に向ったのである。

皆が席に着くと、宗兵衛がふところから南町奉行能勢頼相の書状をとり出して読み始めた。頼相の思いは次のようであった。

(理不尽にかどわかされた子供たちはまことに不憫である。
子供たちが異国に連れ去られたら、この国がある価値もない。
権現様(家康)がこの国を安んじたもうて百年。手を下さぬ公儀…、手を出せぬ自分をふがいなく思うが、如何ともしがたい。

その方たちが頼りじゃ。わが国のかけがえのない子供たちを連れ帰るのじゃ。
理不尽に引き離された親子の悲しみを思い、使命を果たされんことを願う!)

朗読した宗兵衛は、皆に静かに頭をさげて涙を隠した…。やおら頭を上げると、

「苦労はもとより。皆、心を一つにして、今とらわれている子供たちを、必ず一人残らずつれ戻しましょう。親御に良きしらせをもたらすよう力を尽くしましょう。
そして皆も一人も欠けずに帰ってまいります。良いですな!」
皆は静かに平伏し、そして決然と杯をかたむけ、そして杯をその手の中で握り割った…。


数日後の朝六つ(午前六時)。
お京たちを残して、鶴港は長崎港を出港した。
長崎に残った者たちは江戸、長崎、琉球、そして台湾の間の連絡と調整などの後方支援に当たるのである。

西表島(いりおもてじま)で色んなカラクリの扱い方を何度も確かめたうえで淡水に向かった。尚栄が束ねる伊良部衆も合流した。

さらに数日後の夕刻、鶴港は淡水港に碇を投げたのだった。

淡水には、今井壮九指揮のもと納屋衆があやつる納屋船呂宋丸(ルソンまる)と、それに乗った山田信政がひきいる泰和衆(たいわしゅう)が先着していた。

旧知である本郷武蔵と信政、壮九はニヤッと笑い、腕と腕をとりあっただけで言葉を交わすこともなかった。それで十分なのだ。

信政は泰(たい)に拠点を築いて、各国への傭兵派遣を生業にしている。その昔、泰で活躍した山田長政の孫であり、現地日本人武装勢力泰和衆を束ねている。

納屋衆は、お京を主筋と仰ぐ、泰の隣国柬埔寨(カンボジア)に帰化した納屋呂宋(ルソン)助左衛門の後裔である壮九がまとめる武装交易集団である。

この二つの衆は連携して、南海に一大勢力を維持している。

皆は、さっそく談合を開始した。
その席には、バサイ族珠光村(じゅこうそん)の村長の息子とその配下も控えていた。

「皆さんも理不尽なことに苦労されているということじゃが、どうか力をかして下され。皆さんの村をとり返すお手伝いもできよう」
と、宗兵衛が座にさそった。

そして、皆に行者を紹介した。

桃太郎 行者役子角.jpg

行者が術の一端を披露して…、いつものひと騒ぎがおさまった。

ここに『多国籍軍』が結成された。

宗兵衛が談合の口火を切った。

「理不尽は許せない、子供と家族が不憫ではないか。国々の事情や損得などをグダグダ言っている場合ではない、即刻(そっこく)子供たちを助け出すべきではないか。
この戦いは、他国にかどわかされた子供をとり戻す当然の戦いだ。
が、残念ながら、他国の抗議にはことのほか弱い公儀の役人たちの腰くだけが予想される。ついては迅速に作戦を終了することが肝要じゃ」

談合が終了し、酒杯が皆に配られた。皆は声を合わせて酒杯をあおり、

「子供たちの無事奪還を期して!」
と、杯を足元に投げ割ったのである。
続く
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posted by ぷんぷん at 10:32| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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