2020年05月12日

四 あと始末…

四 あと始末…

翔竜たちが一日遅れで無事にもどってきた。

一連の牙島攻略作戦では命を落としたものは一人もいなかった。軽傷を負った者が十名ほどで、完勝と言ってよい内容で終了した…。

珠光村で見つけた天九牌を手にした宗兵衛が、つぶやいた。

「これは…、銅で作られた天九牌は塩梅よく暖めると、阿片煙が出て直接吸える仕組みになっているようじゃ。つまり、阿片携行具であり吸引具でもあるようだ…。象牙で作られた物は地位高き者への贈物にするのではないかの。
天九牌は、阿片入りのままの物を少し残して、あとは火薬を詰め替えて昇竜殿におわたしするのじゃ。蝮退治にお使い頂こう。火薬に詰めかえた木箱は、鄭氏党、泰和衆でお分け下され」

さて、と皆を見まわした。

「清国の非難を封じる手当てですが…。ヨハネス殿、翔竜殿、西班牙(スペイン)国王の文書と福建省巡撫(ふっけんしょうじゅんぶ)・超笛統(ちょうてきとう)の返書の写しをお願いできますかの」

清国は英明をうたわれる康熙(こうき)帝の時代である。

超笛統の動きを朝廷に直接摘発するのが、最も効果的で手っとり早く、そしてあとくされがなかろうということで皆の考えは一致した。

翔虎の案内で、公正な行政官であり康熙帝の信頼もあついと言われる、都察院首班(とさついんしゅはん)(政務監察大臣)の寝所に姿を消して忍び入った。
そして、西班牙(スペイン)国王の書簡の写し、超笛統が受けとった賄賂の領収書、超笛統の弾劾(だんがい)書、阿片が入った天九牌を、枕元にそっと置いた。

翔虎がささやいた。

「余は清国の開祖・愛新覚羅奴児哈赤(アイシンギョロ・ヌルハチ)である。台湾を統括している超笛統をこらしめよ、罪はこのとおりじゃ…、ウンヌンカンヌン…」

すると、翔虎がとめるのも聞かず行者がうっすらと姿を現した。
声優が翔虎ならば俳優は自分じゃ、とはなはだしく勘違いしたのか、見えを張ったのか…、定かではない…。

都察院首班が寝ぼけ眼で行者を見定めようとすると、行者はあわてて姿を消した…。

「超適当(ちょうてきとう)な超笛統(ちょうてきとう)ならばやりかねないことばかりじゃ。金もうけのために福建省巡撫の職を賄賂で買ったと言われた奴であったな。近頃は台湾に行きっぱなしのようだが…。

あ奴はお上の親戚の…、誰とかの遊び仲間の…、愛人の弟の…、義兄弟の商売仲間の…、近所の豆腐屋の…、せがれの悪仲間の…ナントカカントカノ……?と言われておったが、よう考えるとなんで巡撫(知事)になれたのか不明な奴であったのう…。

それにしてもまことに…、まことに恐れ多いことではあるが、奴児哈赤(ヌルハチ)様の御霊の影は、どうも品のかけらも見られなかったが…」

この動きとあわせて、鄭氏党はとらえている百連壇の下っ端の消息をそれとなく街に流していた…。

深夜、この男が寝る小屋の壁にコツンと小石があたる音がした。
男がそっと身を起こして静かに戸をあけてすべり出ていった。
暗がりから、百連壇の幹部に指揮された男たちの影がにじみ出し、しずかに蔵から木箱を運び出していった。

「あばよ、まぬけめ」
と男がののしり声を残し、闇に消えていった。

阿片の一部を超笛統にちらつかせ、りふじん堂一党に奪われた財宝に見合う金品を住民からまきあげることに、目をつむるよう依頼するのである。
しかし、鄭氏党がひそかにあとをつけていることには気づかなかった。

百連壇の幹部とその下っ端の二人が超笛統の屋敷に入った。
しばらくして、鄭氏党の者が屋敷の裏手に潜んだ。

「巡撫様、このほど和寇が台湾に攻めてまいりまして、巡撫様におとどけしようと思っておりました財宝も、私どもの合法的な事業資金もすっかり奪われましてございます。そこで、何とぞご厚情をたまわりまして、事業再開資金確保のために、台湾の民から税をとり立てることにお目こぼし頂きますようお願いします。

もちろん、合法的事業利益の四割は、法人税として納めさせて頂きます。納め方は、有志の方々がつどう会館用の土地購入資金として、とか…。

それとは別に、これはお礼のお薬でございます。
これは薬でございますから、社会通念上の儀礼として許容範囲内のものかと…。もっともその値は何万銀もする物ではございますが…」
と、鄭氏党から奪い返した、天九牌が詰められた木箱の一つをさし出した。

「ウムッ、遠路ごくろうであった。慰労してとらす」

気分が良くなった超笛統は、百連壇幹部と二人で宴をはることにした。
ようは、阿片宴会(パーティー)を早く催したかっただけなのだが…。

ひとしきり酒に酔った超笛統は、

「ところで、薬はどのようにあつかえばよいのかな」
と、泥鰌(どじょう)ヒゲをよじりながら阿片を催促した。

「ははっ、これは気付きませんで失礼いたしました」
と、百連壇幹部が卓の下に置いてある木箱から銅製の天九牌をとり出して火ばしではさむとロウソクの火で焙りはじめた。と、硫黄くさいにおいがし始めた…。

おやっ、と超笛統が思うまもなく、ドカンと天九牌が爆発した。
そのはずみでロウソクがたおれ、次いで卓(テーブル)の酒ビンがたおれたのである。
九十度の白酒(パイチュウ)は、卓を流れて天九牌の木箱にしたたりおち、そのあとを炎が追いかけていった。そして、木箱の天九牌とその下に仕込まれていた火薬が、

「ドッカーン…!」
と、大爆発を起こしてしまった。

爆音を聞いた鄭氏党の者は邸内に踏み込んだ。
鄭氏党の二人は、念のためにとうめき声をあげる幹部のふところを探ると、髑髏(どくろ)号に乗り込む百連壇幹部四人の氏名が記された書付を見つけたのである。

翔竜は、太助が残していった鳩にその書付を託した…。

台湾での一連の作戦は終了した。
続く

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posted by ぷんぷん at 13:39| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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