2020年06月16日

第八章 神々の戦い

第八章 神々の戦い



『小さな角』のつぶやき…

東洋の神々と西洋の悪鬼の戦いか…、これは見ものだ!

作戦は『独りよがり』とか、『勘違い』とか、『表に出せない裏技』とか、なんか変なのもあるようだが…。
まっ、個性が出ていていい、と思いこむことにしよう(そのあとの行者の戦いは、わが分身ながら、かなり水準(レベル)が落ちるのう…)。

それにしても、かどわかされた子供の魂が現世と来世の狭間にさまよう羽目になるとは…。



一 戦い前夜…


弥勒菩薩が、似合わない荘厳さで今後の神仏の後援(バックアップ)について伝えた。

(寸刻でも惜しいときに、カッコをつけるこのアホウの脳細胞を数えてみたいもんじゃ!)
と、心の中でののしりながら、天上界から戻ろうとした行者は、

「こりゃますます大変なことになったわい…」
と楽市丸に舞いおりた。

西班牙(スペイン)海賊船髑髏(どくろ)号が、楽市丸を猛追してきていたのだ。

頭領アントニオが指揮する海賊船には、百連壇頭領 関白海が配下に阿片の木箱を運ばせて乗り込んでいた。皆は急いだために、木箱の阿片が爆薬と詰めかえられているのには気づいていなかった…。

髑髏号は、尖閣諸島沖で板切れにつかまってただよっていた幹部を助けあげたあと、遠州灘沖に先まわりして楽市丸を見はっていたのである。
関白海は息まいた。

「子供の身代金を十倍にも吹っかけ、阿片で江戸を廃人の町にしてやる。江戸幕府をぶっつぶしてくれる!」

アントニオは、西洋悪鬼への生贄にする江戸の子供たちの名前を書いた呪符を邪杯につけて、命令していたのである。

「クラーケンよ!あの船をはるかな沖あいに運べ」
と叫び、身動きがとれない楽市丸に接近していった。

やがて、髑髏号の多くの大砲や先込式鳥銃(マスケット銃)が火を吹き始めた。
帆柱と舵に被弾した楽市丸は、洋上を漂いだした。

もはや、髑髏号が接絃(せつげん)したときに迎え打つしか手がなかった。
皆は覚悟を決めて、物陰に身を潜めてその時をじっと待つのであった。

…が、しばらくすると、砲弾や銃弾が楽市丸の直前で消えて、後方に着水し始めたのである。
上空を見ると、そこには結跏趺坐した、印を結んで一心不乱に経をとなえる行者の姿が浮かんでいた…。

夕闇を迎えると、やっと八丈島の入江に逃げこむことができた。
しかし、別の入江に入った髑髏号が、明早朝に再び攻撃をしかけてくるのは確実である。

「あと一刻(約二時間)も攻撃が続いたらからだがモタンカッタ…。あの術は疲れる…」

桃太郎 行者役子角.jpg



やがて、時日歪曲(じじつわいきょく)の術をかけた行者がヨレヨレに疲れきって、皆のもとに帰ってきた。この術は、念じた対象空間が存在する時を替えるという、行者があみだした術である。

ただし酔っぱらった時に偶然にあみだされた術で、術をかけた空間のまわりの時間移動はなく、術の対象空間とそのまわりの空間の時間がズレルという中途半端さが残った。それで消えた銃砲弾は昨日の同じところに一瞬移動して消え去り、そして背後でまた現時点に戻ってきたのである。

この術は空間を対称にするために、熱量(エネルギー)消費量が莫大であった…。
船に戻った行者は、天上界で見聞きしたことを皆に伝えて、ぶったおれてしまった…。

話を聞いた翔吉と武蔵が、同時につぶやいた。

「牙島要塞の幹部も生き残っていたとは」

「珠光村で倒した百連壇幹部は替え玉だったか…、なんとかせねば」

そのつぶやきを聞いた、出島の医官ヨハネスが、

「どうやら海賊たちは、悪鬼の力をかりて攻撃を仕かけているようです。
八匹の悪鬼が海賊たちを手助けしたら、おそらく防ぎきることは…」
と、絶望的であることを皆に話して頭をかかえた。

…が、しばらくすると、

「まてよ…」
と、衣嚢(ポケット)から西班牙(スペイン)国王の命令書の写しをとり出して読み返した。

「悪鬼との契約のことがこれに書かれています。あくまでも正式な名を書かれた者が生贄として優先されることになっています。
海賊の手元にある邪杯につかっている呪符と、より正確な姓名を記した呪符をとりかえることができれば…」

子供たちに事情を聞くと、海賊たちに名前を聞かれた者は皆この船に乗っている江戸の子供たちだった。そして、いずれも正式には『加藤清四郎』というように隠し姓を持つ子供たちだったが、海賊たちに告げた名は、『清四』などのとおり名であることがわかった。
そこで、書きとめておいた西班牙(スペイン)海賊と百連壇幹部八人の正確な氏名を予備の呪符に書き写した。

「さて、ここからは、行者様のお力を借りるしかないが…」
行者はというと…、まだのびたままだった。

天上界から舞い降りてきて行者の様子を見ていた弥勒菩薩と七福神は、心配になって楽市丸の神棚にはられた護符に身を潜めてうかがっていた。

「わしたちが直接人間に力をかすことは慎まねばならんが、行者がのびてしまったままではのう…。しょうがない、この者たちの工夫がうまくいくまでは、わしたちが西洋悪鬼どもの悪さを防ぐこととするか!」
と覚悟した!

弥勒菩薩と七福神の護符に描かれていたおだやかな神仏の表情は、猛々しい憤怒の表情に変わっていた…。
続く
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posted by ぷんぷん at 15:14| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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