2020年06月23日

二 第三次海戦『神々の戦い』!

二 第三次海戦『神々の戦い』!


恵比寿はそのふくよかな顔をすて、大鯨の背に乗って鋼(はがね)の鞭を打ち振り、クラーケンめがけて何頭もの大鮫を仕かけた。

巨大な蛸の姿をしたクラーケンは、その大きな吸盤を持つ足に噛みつく大鮫を別の足でたたき、からみついては引きたおしていった。

恵比寿は大鮫を次から次と呼び集めては攻撃の手を緩めようとはしない。
大鮫にくらいつかれて噛みちぎられるクラーケンの足も、また次々に生えてきては大鮫を倒していく。

海はどよめき、恵比寿は何度も大鯨から滑り落ちそうになり、ずり落ちてはまた這い戻る、ということをくり返していた。そしていつのまにか尻尾のほうを向いて跨(またが)っていた。まことに格好よくないのだが、

「アリャリャ?鯨の頭が消えた…、まっいいか」
と、小さなことにはこだわらない恵比寿の大らかな性格はともかく、そんなことを言っている場合ではなかった。鋼の大鞭をふりかざしながら大鮫を叱咤して、クラーケンの息の根を止めようと戦いをいどみ続けた。

やがて大鮫が集まる速さが、クラーケンの足が生え変わる速さより速くなってくると、クラーケンの動きが鈍り始めた…。


多くの鹿を供にした寿老人(じゅろうじん)はケンタウロスを相手とした。

ケンタウロスは上半身が人間で、下半身が馬の酔っぱらいの乱暴者であり、弓矢を猛烈に射かけて寿老人にせまってきた。

寿老人は、いつもは不死の霊薬を詰めた瓢箪を持っている。
が、この戦いの前に多くの瓢箪を集めて、ほぼ百度の泡盛に詰め替えていた。
そして、瓢箪の首ひもを供の鹿の角にかけてケンタウロスを待ちうけていた。
ケンタウロスが射かけてきた矢の前に一頭の鹿を押し出した。

鹿は、
「や、や、やめろって…」

…とは、言わなかったが、そんな顔をしてビビッた。しかしケンタウロスの腕前よろしく、矢は瓢箪を射ぬき、あたりに泡盛がまき散らかされた。

こうなると酒に目がないケンタウロスは戦いなどそっちのけで鹿を追いまわし、瓢箪をうばっては泡盛を喰らい、フラフラになってしまった。

この時を待っていた寿老人は一頭の鹿の目の前にかざした指を、ケンタウロスのお尻に向けた。
その鹿は、
「隙(すき)ありっ!」

…とは、言わなかったが、ねらいたがわずその角でケンタウロスにカンチョウしたのである。

「ウッ…」
とのうめきとともに、ケンタウロスは悶絶した。

記録には残せない、相当卑劣な作戦ではあった…。


その青黒い顔が、怒りで赤黒い三面の顔に変わった大黒天は、五丈(約一五メートル)ほどにも姿を巨大化して空を駆け、ケルベロスに闘いを挑んでいった。

三つの頭にのたうつ蛇のひげをはやしたケルベロスは、毒を持つ涎をふりまき、竜の尾を打ちふり大黒天に立ち向かった。

大黒天の大きな拳がケルベロスの頭をたたくと、別の頭が大黒天の頭に喰らいつく。

「イテテッ」
と言いながら、その喰らいついたケルベロスの頭を叩くと、別の頭が大黒天の別の頭に喰らいつく。また、
「イテテッ」
と声が聞こえ…、いつ果てるともしれない戦いがくり返された。

天空には黒い雲が渦巻き、雷鳴が轟き、互いの首すじをねらってはもつれるという死闘を続けていたが、

「メンドクセーッ、もう頭にきた!」
と、大黒天がさらにその姿を巨大化して、ケルベロスの三つの頭を『グワンッ』と音がするほど三回殴りつけた。

「キューッ」
というなさけない声を出して、ケルベロスは失神したのであった…。


久々の公式戦に、毘沙門天は持っているなかで一番派手な甲冑をまとい、

「ヨッシャァーッ!」
との歓声を発して、右手に宝棒(ほうぼう)、左手に宝塔(ほうとう)を持ち、三叉戟(さんさげき)を背にして戦いにのぞんでいった。

相手は山羊の胴に獅子の頭、蛇の尻尾をくねらすキマイラである。

毘沙門天はキマイラの後ろにまわり、その背中に跨ると三叉戟を首筋に打ちこみ、

「天を駆けよっ(ハイヨーッシルバー)!」
と天空を駆けるのだったが、大きく背をふるキマイラからふり落とされ、今度は逆にキマイラの口から噴き出した火炎で、真っ黒こげになってしまった。

しかしそれは毘沙門天の闘争心に、より大きな火をつけてしまった…。
もう宝棒も宝塔もヘチマもない。キマイラの首に筋肉が盛りあがる腕を巻きつけた。激しくはねまわるキマイラに身体を振りまわされながらも、そこいら辺をグルグル回っているのだった。時おり歓喜に満ちた、

「天を駆けよっ(ハイヨーッシルバー)!」
との声を発しながら…。やがてキマイラは疲れはててしまった…。

続く
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posted by ぷんぷん at 09:54| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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