2020年09月01日

四−一 お伽草子『桃太郎奇談』… 前編

四−一 お伽草子『桃太郎奇談』…前編


善八は八丈島から江戸にもどって子供たち帰還の段取りをしたあと、書き下ろしたお伽草紙を京の八文字屋八左衛門の枕元に置いて、八左衛門の脳裏に焼きつけていた。八左衛門は、

「わしは物語書きの天才かもしれん!」
と舞い上がって、一気に『桃太郎奇談』を書き下ろした。

その物語の粗すじはというと…。

昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。
そこは、お城をとりまく町や村から少し離れた山の麓で、由来はわかりませんが村や町の人びとは『中の蔵』と呼びならわしていました。

ある日、お婆さんが浜で貝をひろっていると、大きな桐の箱がしずかな波にゆられているのにきづきました。
ふたをあけてみると、りっぱな大きな桃が並べられていました。
ふたの裏には九曜紋に似たブランドマークがえがかれ、その下に『りふじん堂製』としるされていました。

お婆さんはお爺さんを呼んできて、二人で苦労して箱を家に持って帰りました。
中に入っていた八個の大きな桃をとり出すと、箱の底にブツブツした透明な袱紗(プッチンビニールシート)につつまれた、縦八寸、横六寸ちょっと、厚さ二寸たらず(約二四センチメートル×約十八センチメートル×約五ミリメートル)ほどの、ギヤマン(ガラス)の窓がついた板が出てきました。

袱紗(シート)をとり除くと、ギヤマンの窓の真ん中がかがやき出しました。そして右上をチョッとかじったあとのある、桃の絵が浮き出てきました。

浮き出てきた絵に、思わずお婆さんが指をふれると、八個の桃が二つにパックリと開きました。
なんと、中には七人の男の赤子と一人の女の赤子が、スヤスヤと寝ていたのです。
お爺さんとお婆さんは、八人の子供に桃太郎、桃二郎、…桃七郎、それから桃子と名づけました。

子供たちはすくすくと育ちました。
八人は、山で薬草をとってきては人びとにほどこして病をなおしたり、色んな事を聞きつけては皆に知らせて難儀がふりかからないようにしたりと、、人びとを助ける暮らしをしていました。

その頃、このあたりいったいの国の殿さまがかわりました。
読み書きもろくにできない、家柄だけをじまんする先代の殿さまは、黄双子(マンガ)を読みすぎてオツムの病にかかり、チョットまえに分家になっていた方が家を引きついだのです。
先代の殿さまのお名前は、

「…そう言えば、…なんだったけか…?」
と、人々は首をひねりました。
そもそも、この数代殿さまがお城にいる期間がみじかすぎて、人びとは殿さまの名前を覚える間もなかったそうです。
なんでも、

「アッソウ」
という反応しかできないお方だったと、聞いています。
さて、新しい殿さまの名前は…、ウ〜ン…なんだっけ?
とにかく、最近の殿さまはすべて『一年さま』と言いならわしていましたので、新しい殿さまも一年さまということになりました。

人びとは殿さまがかわるたびに、暮らしが良くなることを期待しました。そして何度もうらぎられました。
分家のお方が殿さまになったことで、今度こそは、と思いました…。
が、すぐに先代さまと負けず劣らずの、似たようなオツムのあったかい(ロクナモンジャネー!)殿さまということがばれてしまいました。
立派なオッサンなのに、お母さまからお小づかいをもらっては、バカ嫁とお芝居を見にいく始末でした。

殿さまは、

「ユウアイ、アルイミ、サイシュツサクゲン…、ユウアイ、アルイミ、セイジシュドウ…、ナンマンダブナンマンダブ…、マンマンチャッアッ」
と聞こえる、変なお経をとなえるだけで何もせず、言うことをきく犬ばかりをかわいがり、町や村の人々の言うことをまったく聞かない、めんどうはまったく見ない人でした。

とにかく『柳さま』という、成りあがり者の言うこと以外は聞かないかたよった政をつづけるばかりでした。

「何もしないで皆の年貢で飯を食っているお殿さまたちが、もう何代続いていることやら、やってらんねえ!」
と若者ははたらく気がうせていくのでした。

それで世のなかはいっそう貧しくなりました。
ひとにたいするいたわりなどはそっちのけになりました。そしてお店がおそわれたりし始めました。あやしげな薬を飲んで人を傷つけたり、年貢をごまかしたりする者も出てきました。

それでもしばらくは、人びとはがまんしていましたが、子供たちがさらわれるということがひんぱんに起こり始め、人びとは『もうがまんがならない、なんとかしてくれろ!理不尽なことを正してくれろ!』と城に向かって直訴したのです。
それでも一年さまは、勘違いしてる人たちを集めては『城遊会(じょうゆうかい)』なんぞをもよおし、ぶどう酒を飲むばかりでした。

その時、殿さまの家来としては、めずらしく曲がったことが嫌いな『南さま』というお役人が、子供たちをさらった者たちをつきとめたのです。
もう一人、『北さま』というお役人がいましたが、この人はガミガミいうだけで、やることはスットコドッコイのお役人でした。

それはさておき、南さまがつきとめた悪者は、さつま芋のような形をした遠くの南海の島に住む、赤鬼、青鬼だったのです。
鬼たちは海を渡ってきては、ふしぎな煙で村々のごくつぶしを手下にして、子供たちをさらっていったりするのでした。

ともあれ、子供たちがとらわれているところがわかったので、殿さまがうばいかえしてくれると村人はこころ待ちにしましたが、殿さまは犬をかわいがるばかりで、何もしません。
なんと、南さま以外のお城のお役人は犬好きの殿様の顔色をうかがい、『お犬様』などと言って、人より犬を大事にするおふれを出したりするだけで、悪者退治などはどこふく風、だったのです。

殿様は、悪者が異国の島の赤鬼、青鬼だったので、異国とゴタゴタするようなことにはふれたくない、とでも思ったのでしょう。
ただで助けてくれると期待していた、仲良しと思っていた国も、

「なに、アホなこと言ってんの」
と、さすがにあきれて、まったく相手にもしてくれません。
ちじれっ毛でかぎ鼻の油ぎった顔の赤鬼、目尻が切れあがりあんだ髪をうしろにたらした青鬼。
殿さまは想像しただけで、(さわらぬ鬼にたたりなしじゃ…)と、身がすくんでしまうのでした。

とにかく、

「人間、うそをコイてはいけません」
と言いながら、あれこれ約束したことにはいっさい手をつけずに、うそばかりコイていました。

続く
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posted by ぷんぷん at 10:46| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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