2020年09月08日

四−二 お伽草子『桃太郎奇談』…後編

四-二 お伽草子『桃太郎奇談』…後編


そこでとうとう、一人こまっている南さまを見かねた桃太郎たち八人の兄弟が立ちあがり、おともをつれて鬼たいじに出かけることにしました。

おともは、バナナを旗印にした素朴な顔をした猿、子供をくわえた親子の黒猫を旗印にした貧相な顔をした雉。
そして、宝船を旗じるしにしたオス六頭、メス一頭の七頭の鹿でした。

もっともこの鹿たちは、一頭を除いてはみずからの姿に不満があるようで、しじゅうブツブツ言っていました。

「なんでおれたちが、ジュロウジンの愛玩動物(ペット)のなりをしなきゃいけないんだ…」
と…。
ともかく、桃太郎たちは南海の島に討ち入ることにしました。


どのくらいの昼と夜をくり返したかわかりませんでしたが、桃太郎たちを乗せた船が大うなばらを乗りきり、とらわれている可愛そうな子供たちをうばいかえしに、鬼たちのねぐらに討ちいりました。

そこは、石で作られた見たこともない大きなお城で、たくさんの鬼がいました。
子供たちは鬼たちに見はられていて、城の中にとじこめられていました。
鬼たちは城の上から、わけのわからない言葉をさけびながら、大きな石やタイマツを投げおろしてきました。

戦いは多くの困難を超えてつづけられましたが、ついに桃太郎たちは石のお城に討ち入りました。
お供の雉が鬼たちにお尻を向けたら、鬼たちは、

「オーッ」
と、逃げまどい、城の広場の片すみに、

「ドドッ」
と走って逃げていき、お互いに、

「ゼーゼーッ…、押すなって!」
と、息をきらしてどなりあいながら、小さくなったのです。

かさなり合っている鬼たちのほうに、また雉がお尻を向けると、今度は鬼たちは広場の反対のかたすみに向かって走り、

「オーッ、ドドッ、ゼーゼーッ…、押すなって!」
と、くり返したのです。

雉がおもしろがって、何度も鬼たちにお尻をむけると、

「オーッ、ドドッ、ゼーゼーッ…、押すなって!オーッ、ドドッ、ゼーゼーッ…、押すなって!」
と、なんどもくり返されて、鬼たちはフラフラと城のなかを走りまわっていました。そしてしまいにはひっくりかえってしまいました…。

「ゼーゼーッ…」

やがて鬼たちは桃太郎たちに土下座してあやまったのです。

「まいりました、子供たちはお返しいたします。子供たちをとらえていたおわびに宝物をさし出します。これからは、いっさい悪いことはいたしません」
ということで、鬼退治が終わりました。

とうとう城にとらわれていた子供たちをうばい返したのです!

でも、喜んだのもつかのまでした。
鬼たちをといただすと、まえからとらえていた子供たちは、すでに遠くの国へ連れ去っているのがわかったのです…。
しかし、その子供達まで取りかえすのはもはや無理でした…。
皆は、後ろ髪を引かれながらもそろそろ帰らなければと、島をあとにしました。

しかし、戦いは島だけでは終わらなかったのです。

多くの財宝を船に積み、南の島を離れましたが、こりない鬼たちは化け物を連れて海のうえを追いすがってきたのです。

何度もあぶない目にあいながら、それでも皆は力を合わせてついに化け物や鬼たちをやっつけました。

お供たちはよく戦いました。
雉は姿を消して空をかけ、壁をすりぬけて、何やらわけのわからない術で悪者どもを気絶させたりしました。

相当くさかったようですが…。まさに超人でした!(鳥ですが…)

七頭の鹿は七匹の化け物と戦いました。

最初は、
「ワイワイガヤガヤ、オスナオスナ」
と、ゆずり合っていましたが、それぞれが相手を見きわめてからは海がわきたつほどの戦いをしのいだのでした。

特に戦いのあいまに聞こえる、メス鹿とメス化物の声は身の毛もよだつほど壮絶でした!
そして、猿は化け物の親分(かしらぶん)との激闘を制しました。軽快な足どりの拳法(ボクシング)でやっつけたのです。なんでも昔は世界を圧する記録を持った拳法の王者(チャンピオン)だったようで、まさに肉体派!

ところが、帰りの戦いに巻きこまれて、かわいそうに一人の子供が命をなくしてしまいました。みんなは悲しみにくれましたが、雉の、

「みんなあきらめちゃだめだ!」
との叫びで、気力をふりしぼりました。

その声を聞いたおともの猿が天上界のお釈迦さまのところに行き、冥界にとり込まれていた子供の魂を自由にしてもらうようお願いしました。
そして猿と七頭の鹿が雉に合わせて念力をおくりました。
すると子供が目をさましたのでした!

皆は大喜びして山のような財宝を宝船につんで帰ってきました。
この財宝は人びとに分かち与えられました。

人びとの生活がなんとかひと息ついたころ、皆は中の蔵のお爺さん、お婆さんの家から桃太郎たちの姿が消えていることに気づきました。

人びとは、

「桃太郎さまたちは、人助けのためにこの世につかわされたのじゃな…。
あの方がたは神仏のおつかいであったか、アリガタヤ、アリガタヤ…。
今頃は、また違うところに人助けに向かわれたのであろうか…。
わしたちばかりが難儀にあっているわけでもない、どうか皆さまのお役に立って下され」
とささやきあい、お殿さまが住むお城ではなく中の蔵に向かって、感謝の手をあわせたのでした…、トサ。

「メデタシ、メデタシ…」

《 完 》
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桃太郎 行者役子角.jpg石松 (002).png桃太郎奇譚 七福神.jpg
posted by ぷんぷん at 09:17| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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