2020年06月30日

二 続 第三次海戦『神々の戦い』!

二 続 第三次海戦『神々の戦い』!


アメミットと戦う福禄寿にはこれといった芸はないが、それなりの戦いを展開した。

頭は鰐(わに)、鬣(ひげ)と上半身が獅子、下半身は河馬(かば)という、超チグハグな姿であることからコンプレックスを感じていた。その性格は獰猛ではあるが、かなり単純であることを見ぬいた福禄寿は優しく接した。

アメミットは、優しくされてつい福禄寿への攻撃が鈍ってしまった…。

死者の心臓をえさとして生きてきたアメミットに懇々と話しかけた。

「シーンパーイ、ないからね…」
と何度も首すじをさすると、河馬の足で立ちあがって猛り狂っていたアメミットはおだやかになり、やがて子犬のように寝息をたて始めた。

そこに福禄寿は異常に肥大した頭で頭突きをかました。

「キャインッ」
という声を発して、アメミットはゴロンとのびてしまった。

これも相当卑劣な作戦ではあったが、ともかくズノウ作戦ではあった…。

異質な戦いが別の天空で繰りひろげられていた。

剣、弓、矢、矛、鉄輪、投げ縄、大鋏と、それとなぜか鏡を、八本になった手に持つ弁財天はメドゥーサ目がけて攻撃を開始した。

行者からメドゥーサのことを聞いていた弁財天は、鏡をたくみに使ってメドゥーサの首から下のみを見ながら戦ったのである。

髪に見まがう、頭にうごめく無数の蛇から毒気を吐いて迎えうつメドゥーサは、左手に鏡の形をした石の団扇を持っている。右手の青銅の手の指をスルスルと伸ばして弁財天の髪をかきむしり、左手の石団扇で弁財天の頭を張りとばし、猪の歯で首を噛みきろうとした。

弁財天は、そうはさせじと、手に持つ剣や矛をメドゥーサの身体に突き立てると、大鋏でチョキンッ、チョキンッとメドゥーサの頭の蛇髪を切りとっていった。

なんとも言えない、クンズホグレツの戦いを展開するのだった。
ただしこの戦いは他のものとはチョッと変わっている。

互いに顔だけは攻撃しないのだった。

そして、どちらからともなく、なぜかタイミングよく化粧タイムが作られ、互いに化粧直しをすると、

「キャーッ」

「ギャーッ」
という身の毛もよだつ奇声を交わしながら、また戦いを再開するのだった。

何回かの化粧タイムが終わった時、弁財天の鏡が偶然にメドゥーサに向いた。

「しまったっ!」

思わず本能で、久しぶりの鏡をのぞきこんでほほ笑んでしまったメドゥーサが叫んだが、すでに手おくれだった。

「ギャッ」
という声を残して、石に変わって海底に沈んでいった…。

「ゼーッ、ゼーッ」
髪をふり乱し、息をはずませる壮絶な姿の弁財天には、誰も近よれなかった…。

大きな袋に唐辛子の粉を入れた布袋は、笑顔を浮かべた穏やかな顔でサイクロブスに近よっていった。

放浪の旅を愛する布袋ではあったが、みずから歩くことはまれになり、いつか太りすぎてメタボになってしまった。そこで、霊力を持つ背に負った袋を押す力をコントロールすることで、チョビッと瞬場移動する技を身につけている。

接近戦を好むサイクロブスは、三丈(約九メートル)にも及ぶ大きな体をかがめてその大きな一つの目で布袋をのぞきこんだ。そして鋭く大きな鋼の強さの爪を持つ三本指の両の手で布袋をつかもうとした。

曖昧な笑みを浮かべた布袋は、左手で背なかの袋の口をサイクロプスに向けて右手に力をこめた。

サイクロプスの両の手は空をつかみ、ついで唐辛子の粉が襲った大きな一つの目から流れ出す涙をぬぐうのみで、布袋の存在などもはや二の次になっていった。

「退散(ゲッツ)…」
という意味不明なかけ声とともに、布袋はサイクロプスが振り回す両手の外に瞬場移動していたのだ…。


さて、互いに一歩もゆずらぬ首領同士の戦いが天空の極みで展開されていた。

石松 (002).png


軽快な足拍子(フットワーク)にのせ、左胴拳(ボディ)、右の突上拳(アッパー)、そして左右の重い正面拳(ストレート)の連打を放つ弥勒菩薩。

背にはえた邪悪な大きな翼をたくみに使い、その口から地獄の炎をふきかけては上空に離れるデーモン。

一歩もゆずらぬ、互角の戦いが続けられていた。

しかし、時が移るにつれて配下の悪鬼の形勢が次々に悪くなっていくのが気がかりなデーモンは、次第に散漫な戦いを強いられていった…。

「アレッ、ヤバッ、エーッ、アイツモッ?」
とつぶやくデーモンは、弥勒菩薩との戦いに集中できなかったのである。
そしていつかプロポーズしようと思っていたメドゥーサが石になったのに目をやってしまった。

「アッ、アーッ、メドチャンが…」

メドゥーサのことを思うと頬がポッと赤らむ純情な一面を持つ、極めて複雑な性格のデーモンはガクッとしてしまった。

そこを弥勒菩薩は見逃さなかった。
たくみに左腕でデーモンの首をかかえこむと、力瘤が盛り上がった右腕でデーモンの顔と言わずボディと言わず、なさけようしゃなくボコボコに殴りつけた。

クリンチコール(消極姿勢指導)のない戦いに決着がついた…。
デーモンは、

「手拭(タオル)…」
と一声うめき、たおれていった。

目はつぶれ鼻血がふき出し、足はもつれていた。

東洋の神々と西洋悪鬼との戦いは終わった…。


桃太郎奇譚 七福神.jpg


海底から救い上げた石のメドゥーサを蘇生させて抱きかかえたデーモンたちは、まったく戦意喪失して、小さな白い手巾(ハンカチ)をふって天界の隅に小さく固まっていた…。

もともと八匹の悪鬼は、無理に旅行程(スケジュール)調整した海外旅行感覚でやってきていたので、

(こちらは、契約にそってやるべきことはやった。あとは報酬を待つのみだ…)という立場(スタンス)をつらぬいたのだ…。

デーモンとメドゥーサにいたっては、別の時空では弥勒菩薩側に立つこともあるのだが、西洋は契約社会であるためにドライに割り切って来日したのである。

楽市丸の護符に描かれた七福神は、元のおだやかな表情に戻っていた。
続く
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2020年06月23日

二 第三次海戦『神々の戦い』!

二 第三次海戦『神々の戦い』!


恵比寿はそのふくよかな顔をすて、大鯨の背に乗って鋼(はがね)の鞭を打ち振り、クラーケンめがけて何頭もの大鮫を仕かけた。

巨大な蛸の姿をしたクラーケンは、その大きな吸盤を持つ足に噛みつく大鮫を別の足でたたき、からみついては引きたおしていった。

恵比寿は大鮫を次から次と呼び集めては攻撃の手を緩めようとはしない。
大鮫にくらいつかれて噛みちぎられるクラーケンの足も、また次々に生えてきては大鮫を倒していく。

海はどよめき、恵比寿は何度も大鯨から滑り落ちそうになり、ずり落ちてはまた這い戻る、ということをくり返していた。そしていつのまにか尻尾のほうを向いて跨(またが)っていた。まことに格好よくないのだが、

「アリャリャ?鯨の頭が消えた…、まっいいか」
と、小さなことにはこだわらない恵比寿の大らかな性格はともかく、そんなことを言っている場合ではなかった。鋼の大鞭をふりかざしながら大鮫を叱咤して、クラーケンの息の根を止めようと戦いをいどみ続けた。

やがて大鮫が集まる速さが、クラーケンの足が生え変わる速さより速くなってくると、クラーケンの動きが鈍り始めた…。


多くの鹿を供にした寿老人(じゅろうじん)はケンタウロスを相手とした。

ケンタウロスは上半身が人間で、下半身が馬の酔っぱらいの乱暴者であり、弓矢を猛烈に射かけて寿老人にせまってきた。

寿老人は、いつもは不死の霊薬を詰めた瓢箪を持っている。
が、この戦いの前に多くの瓢箪を集めて、ほぼ百度の泡盛に詰め替えていた。
そして、瓢箪の首ひもを供の鹿の角にかけてケンタウロスを待ちうけていた。
ケンタウロスが射かけてきた矢の前に一頭の鹿を押し出した。

鹿は、
「や、や、やめろって…」

…とは、言わなかったが、そんな顔をしてビビッた。しかしケンタウロスの腕前よろしく、矢は瓢箪を射ぬき、あたりに泡盛がまき散らかされた。

こうなると酒に目がないケンタウロスは戦いなどそっちのけで鹿を追いまわし、瓢箪をうばっては泡盛を喰らい、フラフラになってしまった。

この時を待っていた寿老人は一頭の鹿の目の前にかざした指を、ケンタウロスのお尻に向けた。
その鹿は、
「隙(すき)ありっ!」

…とは、言わなかったが、ねらいたがわずその角でケンタウロスにカンチョウしたのである。

「ウッ…」
とのうめきとともに、ケンタウロスは悶絶した。

記録には残せない、相当卑劣な作戦ではあった…。


その青黒い顔が、怒りで赤黒い三面の顔に変わった大黒天は、五丈(約一五メートル)ほどにも姿を巨大化して空を駆け、ケルベロスに闘いを挑んでいった。

三つの頭にのたうつ蛇のひげをはやしたケルベロスは、毒を持つ涎をふりまき、竜の尾を打ちふり大黒天に立ち向かった。

大黒天の大きな拳がケルベロスの頭をたたくと、別の頭が大黒天の頭に喰らいつく。

「イテテッ」
と言いながら、その喰らいついたケルベロスの頭を叩くと、別の頭が大黒天の別の頭に喰らいつく。また、
「イテテッ」
と声が聞こえ…、いつ果てるともしれない戦いがくり返された。

天空には黒い雲が渦巻き、雷鳴が轟き、互いの首すじをねらってはもつれるという死闘を続けていたが、

「メンドクセーッ、もう頭にきた!」
と、大黒天がさらにその姿を巨大化して、ケルベロスの三つの頭を『グワンッ』と音がするほど三回殴りつけた。

「キューッ」
というなさけない声を出して、ケルベロスは失神したのであった…。


久々の公式戦に、毘沙門天は持っているなかで一番派手な甲冑をまとい、

「ヨッシャァーッ!」
との歓声を発して、右手に宝棒(ほうぼう)、左手に宝塔(ほうとう)を持ち、三叉戟(さんさげき)を背にして戦いにのぞんでいった。

相手は山羊の胴に獅子の頭、蛇の尻尾をくねらすキマイラである。

毘沙門天はキマイラの後ろにまわり、その背中に跨ると三叉戟を首筋に打ちこみ、

「天を駆けよっ(ハイヨーッシルバー)!」
と天空を駆けるのだったが、大きく背をふるキマイラからふり落とされ、今度は逆にキマイラの口から噴き出した火炎で、真っ黒こげになってしまった。

しかしそれは毘沙門天の闘争心に、より大きな火をつけてしまった…。
もう宝棒も宝塔もヘチマもない。キマイラの首に筋肉が盛りあがる腕を巻きつけた。激しくはねまわるキマイラに身体を振りまわされながらも、そこいら辺をグルグル回っているのだった。時おり歓喜に満ちた、

「天を駆けよっ(ハイヨーッシルバー)!」
との声を発しながら…。やがてキマイラは疲れはててしまった…。

続く
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2020年06月16日

第八章 神々の戦い

第八章 神々の戦い



『小さな角』のつぶやき…

東洋の神々と西洋の悪鬼の戦いか…、これは見ものだ!

作戦は『独りよがり』とか、『勘違い』とか、『表に出せない裏技』とか、なんか変なのもあるようだが…。
まっ、個性が出ていていい、と思いこむことにしよう(そのあとの行者の戦いは、わが分身ながら、かなり水準(レベル)が落ちるのう…)。

それにしても、かどわかされた子供の魂が現世と来世の狭間にさまよう羽目になるとは…。



一 戦い前夜…


弥勒菩薩が、似合わない荘厳さで今後の神仏の後援(バックアップ)について伝えた。

(寸刻でも惜しいときに、カッコをつけるこのアホウの脳細胞を数えてみたいもんじゃ!)
と、心の中でののしりながら、天上界から戻ろうとした行者は、

「こりゃますます大変なことになったわい…」
と楽市丸に舞いおりた。

西班牙(スペイン)海賊船髑髏(どくろ)号が、楽市丸を猛追してきていたのだ。

頭領アントニオが指揮する海賊船には、百連壇頭領 関白海が配下に阿片の木箱を運ばせて乗り込んでいた。皆は急いだために、木箱の阿片が爆薬と詰めかえられているのには気づいていなかった…。

髑髏号は、尖閣諸島沖で板切れにつかまってただよっていた幹部を助けあげたあと、遠州灘沖に先まわりして楽市丸を見はっていたのである。
関白海は息まいた。

「子供の身代金を十倍にも吹っかけ、阿片で江戸を廃人の町にしてやる。江戸幕府をぶっつぶしてくれる!」

アントニオは、西洋悪鬼への生贄にする江戸の子供たちの名前を書いた呪符を邪杯につけて、命令していたのである。

「クラーケンよ!あの船をはるかな沖あいに運べ」
と叫び、身動きがとれない楽市丸に接近していった。

やがて、髑髏号の多くの大砲や先込式鳥銃(マスケット銃)が火を吹き始めた。
帆柱と舵に被弾した楽市丸は、洋上を漂いだした。

もはや、髑髏号が接絃(せつげん)したときに迎え打つしか手がなかった。
皆は覚悟を決めて、物陰に身を潜めてその時をじっと待つのであった。

…が、しばらくすると、砲弾や銃弾が楽市丸の直前で消えて、後方に着水し始めたのである。
上空を見ると、そこには結跏趺坐した、印を結んで一心不乱に経をとなえる行者の姿が浮かんでいた…。

夕闇を迎えると、やっと八丈島の入江に逃げこむことができた。
しかし、別の入江に入った髑髏号が、明早朝に再び攻撃をしかけてくるのは確実である。

「あと一刻(約二時間)も攻撃が続いたらからだがモタンカッタ…。あの術は疲れる…」

桃太郎 行者役子角.jpg



やがて、時日歪曲(じじつわいきょく)の術をかけた行者がヨレヨレに疲れきって、皆のもとに帰ってきた。この術は、念じた対象空間が存在する時を替えるという、行者があみだした術である。

ただし酔っぱらった時に偶然にあみだされた術で、術をかけた空間のまわりの時間移動はなく、術の対象空間とそのまわりの空間の時間がズレルという中途半端さが残った。それで消えた銃砲弾は昨日の同じところに一瞬移動して消え去り、そして背後でまた現時点に戻ってきたのである。

この術は空間を対称にするために、熱量(エネルギー)消費量が莫大であった…。
船に戻った行者は、天上界で見聞きしたことを皆に伝えて、ぶったおれてしまった…。

話を聞いた翔吉と武蔵が、同時につぶやいた。

「牙島要塞の幹部も生き残っていたとは」

「珠光村で倒した百連壇幹部は替え玉だったか…、なんとかせねば」

そのつぶやきを聞いた、出島の医官ヨハネスが、

「どうやら海賊たちは、悪鬼の力をかりて攻撃を仕かけているようです。
八匹の悪鬼が海賊たちを手助けしたら、おそらく防ぎきることは…」
と、絶望的であることを皆に話して頭をかかえた。

…が、しばらくすると、

「まてよ…」
と、衣嚢(ポケット)から西班牙(スペイン)国王の命令書の写しをとり出して読み返した。

「悪鬼との契約のことがこれに書かれています。あくまでも正式な名を書かれた者が生贄として優先されることになっています。
海賊の手元にある邪杯につかっている呪符と、より正確な姓名を記した呪符をとりかえることができれば…」

子供たちに事情を聞くと、海賊たちに名前を聞かれた者は皆この船に乗っている江戸の子供たちだった。そして、いずれも正式には『加藤清四郎』というように隠し姓を持つ子供たちだったが、海賊たちに告げた名は、『清四』などのとおり名であることがわかった。
そこで、書きとめておいた西班牙(スペイン)海賊と百連壇幹部八人の正確な氏名を予備の呪符に書き写した。

「さて、ここからは、行者様のお力を借りるしかないが…」
行者はというと…、まだのびたままだった。

天上界から舞い降りてきて行者の様子を見ていた弥勒菩薩と七福神は、心配になって楽市丸の神棚にはられた護符に身を潜めてうかがっていた。

「わしたちが直接人間に力をかすことは慎まねばならんが、行者がのびてしまったままではのう…。しょうがない、この者たちの工夫がうまくいくまでは、わしたちが西洋悪鬼どもの悪さを防ぐこととするか!」
と覚悟した!

弥勒菩薩と七福神の護符に描かれていたおだやかな神仏の表情は、猛々しい憤怒の表情に変わっていた…。
続く
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posted by ぷんぷん at 15:14| Comment(0) | りふじん堂・桃太郎奇譚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする